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March 02, 2013

ローラン・ヴァン・ランカー『Surya』、エイダン・オルーク/LAU、『エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ』、川内有緒『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』

2013/2/27 (水)

 夜、明治大学野生の科学研究所で行なわれた『めぐりゆく神話:映像人類学の可能性』でローラン・ヴァン・ランカーの『Surya』を見て、質疑応答のセッションを聞く。
 『Surya』は、映像と人類学を学んだベルギーのローランが8か月をかけてユーラシア大陸を陸路で移動しながら、各地の語り部・ミュージシャンと出会って作り上げた神話作りの映像。
 彼は各地で出会った語り部に、名前のない架空の英雄の物語りを語るように依頼する。ベルギーからヴェトナムまでの間には、トルコのババズーラのようにぼくの知っている人たちも登場するが(映画『クロッシング・ザ・ブリッジ』のパロディのような映像)、他は知らない人ばかりだ。インドの「マハーバーラタ」の物語や、ネパールの「レッサム・フィリリ」のような民謡も、その神話作りに関わってくる。インドでは名前がなかった英雄にスリヤ(太陽)という名前が与えられる(この場面はすごい)。
 神話生成の過程を追う過程も神話であるような、フィクションとドキュメンタリーがメビウスの輪のようにつながった一種のメタ作品であり、『Surya』自体が映像人類学の研究対象になりそう。
 映像上映の後、仲野麻紀が神話の語りを引き継ぐ形でサックスの即興演奏を行ない、質疑応答の後、会場にいた松田美緒、渡辺亮に仲野麻紀も加わって、再び即興のライヴが行なわれた。


2013/2/26 (火)

 朝、神宮前のプランクトンのスタジオでスコットランドのエイダン・オルークの取材。彼はラウーのリーダー。ラウーはBBCラジオ2のフォーク賞で毎年のようにベスト・バンド賞を受賞している。新作『レイス・ザ・ルーザー』について話を聞く。このアルバムのプロデューサーはマイ・モーニング・ジャケット、スフィアン・スティーヴンス、ディセンバリスツ、REMなどロック系の仕事が多い売れっ子のタッカー・マーティン。

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 夜、東中野のポレポレ坐の『エンサイクロペディア・シネマトグラフィカを見る2 アフリカの音楽と芸能』のゲストに招かれて、芸術人類学者の石倉敏明、映像人類学者の川瀬慈両氏とのトークに参加。
 『エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ』はドイツ国立科学映画研究所が1951年からはじめた映像百科で、2000以上の映像記録が残っている。その中から「アボメーの宮廷の王妃たちの踊り」(ベナン、1958年)、「楽弓の演奏」(コートジヴォワール、1968年)、「軍楽オーケストラ トゥル」(コートジヴォワール、1968年)、「トランスダンスを伴う病気治療」(カラハリ砂漠、1976年)が上映された。王妃たちの踊りは音が入っていないが、いずれも素晴らしい映像。
 後半は分藤大翼の『イェリ』『水太鼓』と、川瀬慈の『ラリベロッチ・終わりなき祝福を生きる』『ドゥドゥイエ』が上映された。
 前2作はカメルーンのバカ・ピグミーを記録した近年の映像で、短いがとてもきれいな映像。この種の音は聞いたことがあるが、映像で見れたのがうれしかった。なお、3月9日まで馬喰町ART+EATでは、分藤大翼の『アフリカ、森の民の音楽と食事』展が行なわれている。
 後2者はエチオピアの映像で、門付け芸人夫妻ラリベロッチのたくましい日常を描いたものと、セクシャルな歌で議論を巻き起こしているアズマリ(やはり音楽を職業とする人たちだが、都市の酒場でよりポップな音楽をやっていて、近年は欧米にもけっこう進出している)のライヴ映像。ジャズ/ワールド・ミュージックの周辺で国際的に注目を浴びているエチオピアの音楽の現地の生映像はインパクト大。
 しゃべりに行って仕事をしたというより、はるかに多くのものを教わった一夜だった。

2013/2/23 (土)

 川内有緒の『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻灯社)を読了。
 著者はパリで国連につとめているとき、出張したバングラデシュで、役人に話を聞かされた放浪の楽士バウルのことが気になって、退職後、実際に会いに出かけた。その旅の話をまとめた本だ。
 著者は音楽の専門家ではないので、バウル入門みたいな本ではないが、日本でバウルについて書かれた最も詳しい本であることはまちがいない。ユネスコの無形文化遺産にも登録されているバウルがバングラデシュの社会でどのような位置を占めているのかがよくわかる。バウルの歌の哲学的、詩的な深さもよくわかる。そして、旅行記として楽しく読める。
 なお、ボブ・ディランの『ジョン・ウェズリー・ハーディング』のジャケットには、プルナ・ダス・バウルという有名なバウルが写っている。バウルの天才ラロンの歌をうたったフォリダ・パルビーンのアルバム『鳥はいつ飛んでいってしまうかわからない』は日本盤が出ている。彼女はバウルではないが、この本でも詳しく紹介されており、国際交流基金の招きで来日したこともある。


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