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September 30, 2013

『アトランティック・レコードを創った男』他、本の感想。

2013/9/29(日)

 たまっている本を読んだ感想の続き。
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『アトランティック・レコードを創った男 アーメット・アーティガン伝』
ロバート・グリーンフィールド著、野田慶子訳、折田育造監修
(スペースシャワーブックス、2013年)
原著The Last Sultan: The Life And Times Of Ahmet Ertegun, by Robert Greenfield, 2011
 もし20世紀後半のR&Bやロックの歴史からアトランティック・レコードを削除すれば、とてつもなく大きな空白ができる。そのレコード会社を作り、育てた人物の伝記。
 1947年、アーメットとハーブ・エイブラムスンがニューヨークでアトランティック・レコードを設立した。1949年には『ビルボード』誌でリズム&ブルースというジャンル名を発案した男ジェリー・ウェクスラーが加わった。アトランティックは50年代にはR&Bのトップ・レーベルに成長し、60年代以降はロックの分野でもめざましい躍進を続けた。その途中の1967年にワーナー・グループに加わってインディペンデントではなくなったが、アーメットは亡くなるまでアトランティック・レーベルの指揮をとり続けた。
 元駐米トルコ大使の息子として生まれ、無類の音楽ファンで、音楽史に残る数多くの作品を手がけ、百鬼夜行の音楽業界を泳ぐすべを知っていた人物だから、奇想天外なエピーソードには事欠かない。会社が大きくなってからの契約をめぐる駆け引きや社交の話もおもしろいが、音楽ファンには50年代までの記述が興味深く読めるだろう。破天荒なやり手のビジネスマンは他にいくらでもいるが、ポピュラー音楽の歴史を支えてきた人は、そうざらにはいないからだ。
 巻末に、日本で長年にわたってアトランティック・レコードを担当していた折田育造の回想が付け加えられている。

『キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン』キャロル・キング著、松田ようこ訳、河出書房新社、2013年
原著 A Natural Woman a memoir, by Carole King, 2012
 シュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」、リトル・エヴァの「ロコモーション」、ドリフターズの「アポン・ザ・ルーフ」、アリサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」、ジェイムス・テイラーの「君の友だち」など数多くのヒット曲を作曲しただけでなく、シンガー・ソングライターの時代には『つづれおり』の大ヒットを放ったキャロル・キングの自伝。
 本当に自分で書いたようで、ていねいに書いてあるところもあれば、話が尻切れとんぼになっているところもあるが、人柄がよくわかる文章だ。上記のヒット曲にまつわるエピソードはもちろん楽しいが、少女時代に演劇をめざしていたところや、公民権運動への関心なども興味深い。結婚生活のあれこれをつづったところは驚愕だった。
 かつてビートルズの伝記本では、彼らがキャロル・キングに会いに行ったのは1964年の最初のアメリカ公演のときと書かれていたが、この本によれば1965年に彼女がホテルに訪ねて行ったことになっている。どっちが本当なんだろう。高校生だったときに、上記のアトランティック・レコードにいきなり売り込みに行った話も出てくる。そのときアーメットとジェリー・ウェクスラーは・・・その先は本をお読みください。

『ドレのロンドン巡礼 天才画家が描いた世紀末』谷口江里也著、講談社、2013年
フランスの画家ギュスターヴ・ドレが19世紀末にロンドン各地を活写した絵をもとに、当時のロンドンの様子を現在と照らし合わせながら考察した本。1872年に刊行された図版がたくさん収録され、美術批評的な記述があるのはもちろん、社会批評的な側面からの記述も多い。
絵を一見して感じるのは、ある種の過剰さだ。それがこの画家の作風によるものなのか、19世紀末のロンドンがそうさせたのかはぼくにはわからない。街路や建物を埋め尽くすおびただしい群衆は、産業革命によって生まれた都市に引き寄せられた人々の期待と同時に一触即発の不安をも感じさせる。
音楽にまつわる劇場などの絵は少ないのだが、イギリスのロックに登場する街路を思い浮かべながら読むと、音楽を聞く楽しみが増える。移民の集まる街角の絵からは、いまのロンドンに直接つながる空気も感じられる。個人的には、9月にオルケスタ・リブレ版『三文オペラ』(ロンドンが舞台)を見た後に読んだので、よけい興味深かった。


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