« 最近読んだ音楽書いろいろ | Main | 『アトランティック・レコードを創った男』他、本の感想。 »

September 13, 2013

スキヤキ・トーキョー

2013/9/12(木)

 8月の27日(火)から29日(木)まで、渋谷WWWで行なわれたスキヤキ・トーキョーに今年は3日とも足を運んで、出演者にインタビューすることもできた。
 パルコの近くにある会場WWWはかつての映画館シネマライズを改造したもので、スペース・シャワーが運営している。大きさはスタンディングで3百人くらい、詰めればもう少し入るだろうか。フロアに段差があるのでステージが見やすいのがありがたい。ただし、フロアにもロビーにも、座れるところが少ないので、長時間のライヴには体力が必要。
 27日の前半はヴェルナー・プンティガム(オーストリア/トロンボーン)、マチュメ・ザンゴ(モザンビーク/バラフォン他)、サカキマンゴー(日本/親指ピアノ)によるスペシャル・コラボ・バンド。ヴェルナーとマチュメはヨーロッパではユニットで活動しているそうで、エレクトロニックなリズムに生楽器を重ねた音楽。マチュメとサカキマンゴーは柔軟なリズム感覚が共通するが、ヴェルナーは現代音楽寄りの「揺れない」リズム感覚の持主なので、アンサンブルは微妙。その距離を評価するか、違和感を持つかで、楽しみ方が変わってくると思った。
 後半はジンバブエのオリヴァー・ムトゥクジ&ザ・ブラック・スピリッツ。本人のギターに、コンガ、ドラム、ベース、女性コーラス2名という編成。同国の巨人トーマス・マプフーモのかつてのバンド・メイトにして後輩にあたるオリヴァーは、ひたすらストイックな先輩とちがって、エンタテインメントなシンガー・ソングライターで、ギターで短いフレーズをくりかえし弾きながらうたう。そのポップなフレーズには親指ピアノのフレーズを移し変えたようなところと、英米のブルースやロック、あるいはラテンにも通じるところがあり、ボニー・レイットが影響を受けたのもなるほど。リズム・アンサンブルには洗練されたグルーヴがあり、本人やメンバーがときどき披露するダンスのやりすぎない品のよさも楽しかった。朝日新聞にコンサート評を書いた。インタビューは『CDジャーナル』に掲載の予定。
 28日の前半は高木正勝。会場は昨日とはうってかわって若い女性客でいっぱい。彼はCG処理された映像を写しながらピアノを弾き、ときに揺れるような柔らかい声でうたった。途中から熊沢陽子(ヴァイオリン)らが演奏に加わった。音数の多いピアノも、抽象的な映像も、エチオピアで撮影した子供たちを加工した映像も、彼の表現からはある種の過剰さが感じられ、その過剰さがどこから来るものなのかを思いめぐらせて謎が深まるうちに演奏が終わった。
 後半はユーカンダンツ(ユー・キャン・ダンス)が登場。彼らはエチオピア人歌手アスナケ・ゲブレイエスとフランス人の4名のミュージシャン(サックス、ギター、キーボード・ベース、ドラム)によるバンド。アスナケがうたうエチオピア風5音階メロディの歌とプログレッシヴ・ロックやヘヴィ・メタル的なロック・サウンドとの組み合わせが話題。アスナケは予想以上に歌に力がある人で、情熱的にうたいまくり、踊りもダイナミック。演奏がスピード・アップしてもクールな感触を失わないフランス勢との組み合わせが、おもしろくもあり、不思議でもあった。アンコールでやった次のアルバムに入る予定の新曲が印象に残った。
 29日の前半はアルゼンチンのマリアナ・バラフ。打楽器を叩きながら民謡的なオリジナルをうたう。新作アルバム『サングレ・ブエナ』もサウンド的にはオーソドックスなフォルクローレに舵を切ったアルバムだったが、エレクトロニックな音を使っていた前回の来日とちがって、今回は生っぽさを強調。ボリビアの民謡ではイマ・スマックのような高い声も出していた。笹久保伸がギターでゲスト参加した「羊飼い」とアタウアルパ・ユパンキのサンバの曲はなかなかディープだった。
 後半はブラジルのミナス・ジェライス出身のピアニスト/歌手アントニオ・ロウレイロが日本人とのスペシャル・バンドで登場した。ジャズやクラシックの要素もある彼の音楽は、ショーロ/サンバ/ボサノヴァの延長線上にあるリオの音楽とくらべると、音楽の構造が流動的。エグベルト・ジスモンチやウアクチなどに連なる音楽家という気がした。のどの調子がいまいちなのか、声がときどき割れたが、CDから想像していたより情熱的にうたう人だった。佐藤芳明(アコーディオン)、鈴木正夫(ベース)、芳垣安洋(ドラム)ら日本側のミュージシャンの演奏も素晴らしかった。
 ユーカンダンツとアントニオ・ロウレイロについては『intoxicate』に記事を書く予定。

|

« 最近読んだ音楽書いろいろ | Main | 『アトランティック・レコードを創った男』他、本の感想。 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 最近読んだ音楽書いろいろ | Main | 『アトランティック・レコードを創った男』他、本の感想。 »